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「小さなスプーンおばさん」
                   石田 一花さん

 ある朝、目が覚めたらとつぜんティースプーンぐらいの大きさになってしまったおばさん。体が小さくなっても少しも
あわてずに、ふだん通りの生活をしていくおばさんが、たのもしく見えてきました。私だったら、ふ安でいても立っても
いられず、だれにも知られたくないので、もちろんベッドから起き出すことなんてできません。でも、スプーンおばさんは、
ふだんの生活をあたりまえのようにしていきます。ちょっとおどして部屋のそうじをネズミにやらせ、ネコには皿あらい、
犬には、「大きなほねをあげるよ。」と、物でつる作せんを。
「さすがスプーンおばさん!!」と、思いました。なぜなら、私も犬といっしょで、めっきり物には弱いからです。
品物というよりは食べ物に弱いのです。何かにつけておいしいエサでつられてしまいます。私はスイミングと
体そうを習っています。進きゅうするたびにお祝いをかねて、食事に行くようになりました。習いたての5才のようち園生
だったころ、テストにうからないと、くやしくてないていました。それがいつしか「合かくしたらレストランに
連れて行ってもらえるというごほうび、ゴールにむかってがんばる。」にかわりました。そのおかげ?で
なのか、この3年間で1きゅうまで合かくし、今は、百メートルメドレーをがんばっています。
私は、なんだか犬の気持ちがわかります。 
 そして、おばさんは次に、大雨をふらせて洋ふくをあらい、南風や太陽にかわかしてもらうなど、こんなに上手に
いくのかしらと思うぐらい、スプーンおばさんの手にかかると天気だって自由にあやつられてしまうのです。
正におどろきです。さすがに昼食のパンケーキを作らせるのは、む理なのでは、と思った私がまちがいでした。
今度はいつものおどしもんくを言うおばさんではありません。
「こんなステキなつぼやフライパンはありっこない。」と、ほめちぎるのです。もちろんその気になってしまうつぼや
フライパンたち。半分やけているパンケーキも負けじとおばさんの言葉通りに、30回もパンケーキがとび上がって
クルっと回転するすがたは見ごたえがあります。まるで、大きな工場風けいのように感じました。
こんなにつ合よく、かいけつできてしまうのはおばさんのトリック?トリックだとタネあかしがあるはず。それとも
、動物とも会話ができるまじょなのかしら?いつしかお話の世かいにむ中になっている私がいました。
 おばさんの回りにはとにかく事けんがおきます。次から次へとむ理なん題なことばかりです。
私は平和でおだやかな毎日が大好きです。学校で注意されている友だちをみると、ドキッとしてしまいます。
もちろん私自身もほめてもらえると気持ちが良いけれど、バカにされると太陽のように暑くカンカンになったり、
大雨のようになみだもでます。
 ですから、スプーンおばさんのような生活をしたいとは思わないけれど、小さくなった体でもいろいろな人や
動物、だれとでもなか良くたすけ合いながら生活するスプーンおばさんがうらやましく思います。
 実はさいしょ、スプーンおばさんのおどす言葉づかいが苦手でした。でもそれは、いじわるではなく
相手の気持ちを引き出すためにその人に合った言葉づかいをしているのだと気づきました。相手を
よくかんさつをし、知るど力をしているからできることだと思いました。私も、相手の良い所を見つけて
みとめてあげたり、ほめてあげたり言葉でつたえようと思います。そして、相手の気持を考えられる人になりたいです。
そのためには、相手を知る第一歩として会話が一番大切だという事を、この本で知りました。

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